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【コラム】自作キーボードはどうして日本語配列が少ないの?

この記事は、キーボード #1 Advent Calendar 2024 の2日目の記事です。

昨日はhsgwさんによるマクロパッドではないマクロパッドの使い方でした。

明日はマナブさんのもっと “自由” なキーマッピングの提案です。

 

はじめに

日本国内において、一般的に販売されているキーボードやノートPCに搭載されているキーボードはそのほとんどが日本語配列キーボードです。
日本に住む多くの人たちは日本語配列ということすら意識せず、日頃から日本語配列キーボードを利用してタイピングをしています。

しかしいわゆる「自作キーボード」においては急激にその数を減らします。
どうして・・・?

ということで本日は日本語配列キーボードとはなにか、どうして自作キーボードにおいて日本語配列キーボードが少ないのか、私なりに解説していきたいと思います。

※個人の感想を多く含みますので、予めご了承ください。

※さっさと本題に入れ!という方は「じゃあなんで日本語配列の自作キーボードは少ないの?」からお読みください。

 

本記事内の言葉の意味合い

本記事内において以下の言葉は各説明の通りの意味合いで使用します。

日本語配列キーボード:ある程度JIS規格に準拠して作られた日本国内向けの配列を採用したキーボード全般を指す言葉として使用します。具体的には主に大きなエンターキー(ISOエンターキー)、特異な記号の配置、「全角/半角」「変換」「無変換」など日本語入力特有のキーを特徴として持つものを指します。正確にJIS規格に適合しているかどうかは問いません。

自作キーボード:メーカー(企業)ではなく個人やグループが自主製作しているキーボード全般を指す言葉として使用します。組み立てキットか完成品かなどの販売形態は問いません。

 

そもそも配列って何?

キーボードにおける「配列」とは"キーがどのように配置されているか"を指します。

日本国内において一般的に販売されているのは主に「日本語配列(JIS配列)」と「英語配列(US配列)」の2種類です。*1

 

日本語配列(JIS配列)

日本語を主言語として使う人のために設計されたキーボード配列です。

赤字部分が英語配列との主な違い

主な特徴は以下の通り。

  • 逆L字型の大きなエンターキー(ISOエンターキー)が使用されている。
  • 各記号キーが独特な配置となっている。
  • 「全角/半角」「変換」「無変換」「かな」など日本語入力のための専用キーが存在する。

 

英語配列(US配列)

主にアメリカで利用されるキーボード配列です。*2

ただし日本国内にも愛好者がいるように、アメリカだけではなく世界中で利用されている、ある意味でスタンダードな配列でもあります。

青字部分が日本語配列との主な違い

特徴は以下の通り。

  • 横長でコンパクトなエンターキー(ANSIエンターキー)が使用されている。
  • 記号キーがシンプルで直感的な配置になっている。
  • 日本語配列のような言語に特化した専用キーはなく、英語入力を前提とした最小限の構成となっている。

 

日本語配列英語配列の違い

改めて並べてみるとわかりますが、エンターキーと記号キーの違いが大きいです。

特に日本語配列の記号キーについては世界中を見ても日本特有の配置*3のようで、これが自作キーボードにおける日本語配列の少なさの要因の一つではないかと思っています。(詳細は後述)

 

(余談)

日本語のための日本語配列があるなら、他の国にもあるのでは?

そうなんです、基本的にキーボード配列は各言語ごとにガラパゴスな配列が存在するようなんです。

例えばフランス語圏では「AZERTY配列」、ドイツ語圏では「QWERTZ配列」などがあるようですし、お隣韓国ではハングル入力のための「韓国語配列」があるそうです。

ご興味があれば各国の配列について調べてみるのも面白そうです。

各国の自作キーボード愛好者たちもキーキャップ問題に悩んでいるのかもしれないと思うと、ちょっと救われた気分になります。

 

日本語配列って何が嬉しいの?

日本語配列英語配列の違いがわかったところで、改めて日本語配列の何が嬉しい*4のか見ていきましょう。

 

日本語入力に特化している

やはり最大の魅力は日本語入力のための配列であるということでしょう。

「全角/半角」キーで日本語と英語の入力を切替できたり、日本語入力でよく使う記号が使いやすい位置にあったり*5と、日本語をスムーズに入力するための配列となっています。

多くの人はキーボードを使って日本語を入力することになりますので、そのための配列というだけで大きなメリットがあります。

 

Enterキーが大きく押しやすい

日本語入力は改行だけでなく変換の確定時にもエンターキーを押すため、英語などの他言語に比べてエンターキーを使用する頻度が高いのが特徴です。

英語配列の横長のエンターキーと比べて、日本語配列のエンターキーはサイズが大きいため、押しやすいのが嬉しいポイントです。

また形も特徴的なのでブラインドタッチでもすぐに場所がわかります。

 

追加学習コストがいらない

国内で販売されているノートPCやキーボードの多くは日本語配列ですし、学校や職場でも多くの場合日本語配列のキーボードが利用されています。

実際ほとんどの方が初めて触ったキーボードは日本語配列のものではないでしょうか?

普及している配列だからこそ、ノートPCやキーボードを買い替えることになっても追加学習をする必要がなく、スムーズに新しいものに交換することができます。

 

じゃあなんで日本語配列の自作キーボードは少ないの?

圧倒的な国内シェアを誇る*6日本語配列ですが、こと「自作キーボード」においてはマイナーもマイナー、ドマイナーな扱いです。

販売(頒布)されているものに限ると、正直数えるほどしか存在しないのではないかと思われます。みんな日本語配列嫌いなの!?

ということで日本語配列キーボードをメインに設計している私が、実際に設計していく中で感じた「日本語配列の自作キーボードが少ない理由」をあげていきたいと思います。*7

 

キーキャップがない

これでしょ!!!!

一番の理由は!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

そうなんです、日本語配列のキーキャップが市場にほとんど存在しないんです。

 

実はつい少し前まで、日本語配列向けに印字されたキーキャップはFILCOのMajestouch用のものくらいしかありませんでした。

せっかく自分でキーボードをカスタムできるのに、選択肢が存在しないんじゃ・・・ということで日本語配列を設計する方が少なかったのではないかと思われます。

実際に私もこれまで日本語配列のキーボードを複数設計していますが、キーキャップがないということが制限となって理想の配列にできない場面がありました。

 

ただし最近ではKeychronがJIS配列用のPBTキーキャップを出したりサリチル酸さんがAcidCapsシリーズを展開されてたりと、Majestouch一択の状況ではなくなってきています。

またYUZU Keycapsなどキーキャップをオーダーメイドすることができるサービスも出てきていますので、日本語配列キーキャップ問題については少しずつ解消されてきている印象です。

今後日本語配列のキーキャップが増えていけば、日本語配列の自作キーボードも増えていくかもしれません。

 

なお日本語配列キーキャップやYUZU Keycapsのオーダーメイドについてはそれぞれ記事にまとめていますので、よければあわせてご覧ください。(ダイマ

alektor.hatenablog.com

alektor.hatenablog.com

 

プログラマーやゲーマーなど英語配列に馴染みのある人が多い

自作キーボードの設計をされている方には、ITエンジニアなど一日の中でキーボードを触る時間が長いの方が多いように感じます。

特にプログラムを書くプログラマーの方などは日本語配列よりも英語配列の方が効率的と言う方もいらっしゃいますし、もともと英語配列のキーボードにそこまで抵抗*8がない方が多いのかもしれません。

また最近ではFPSなどで使用されやすいゲーミングキーボードなどでも英語配列のものが増えていて、こういった方々も英語配列をすんなり受け入れられる土壌があるのではないかと思います。

「現状キーキャップの選択肢も少ないし、無理に日本語配列に拘る必要もないよね」という感じかなぁと。

 

そもそも普通の配列を求めていない、もっと俺ナイズドしたい

というかそもそも自作キーボード設計のきっかけは、多くの場合「もっと自分に合ったキーボードが欲しい*9」だと思います。

せっかく自分で設計するならトンデモ配列にしてぇじゃんよォ?(暗黒微笑)

せっかく自分で設計するなら、市販されている一般的なものではなくてもっとダイナミックにアレンジしたくなるのは誰もが思うことでしょう。

メーカー製の日本語配列キーボードが市場に溢れている現状、多くの人にとって敢えて日本語配列の自作キーボードを設計する理由がないのかもしれません。

 

どうして日本語配列キーボードに拘るの?

さてそんな中で私は日本語配列に拘ってキーボードの設計を続けています。

どうして拘っているのか、それには理由があります。

 

繰り返しになりますが、多くの日本人にとってキーボードと言えば日本語配列キーボードです。

英語配列や特殊な配列のキーボードを新しく使い始めるには練習が必要です。

せっかく自作キーボードに興味を持っても、ややこしいパーツ調達やはんだ付けだけでなくタイピングの練習までしなければいけないとなると、その段階で諦めてしまう人も少なくないはずです。

 

実は私自身も以前、自作キーボードに興味を持ったものの諦めた経験があります。

私は仕事柄日本語配列のキーボードが必須なのですが、当時は日本語配列の自作キーボードが今以上に少なく、また関連情報も少なかったことから自作キーボードが非常に難解なものに感じてしまい諦めてしまいました。*10

 

こういった経験から「自作キーボードに興味を持った人が手に取りやすいキーボードがもっとあってもいいはず」「慣れ親しんだ日本語配列のキーボードのもっとあっていいはず」、そう思って日本語配列に拘った自作キーボードの設計をしています。

 

まとめ

ということで日本語配列についてアレコレ語ってみました。

何のかんの言いましたが、自作キーボードは基本的に「俺が考えた最強のキーボード」を作る感じですし機能に差はあっても優劣はありません。

どんなキーボードを作るのも、使うのも、欲しがるのも自由です。

 

自作キーボードに興味を持ったのであれば、是非足を踏み入れていただいて、自分だけの最強のキーボードをSNSで見せびらかしてもらえればと思います。

 

そして最初の1台に、もしよければ私の設計した日本語配列のキーボードを選んでいただけると嬉しいなと思うのでした。(宣伝)

alektor.booth.pm

 

使用したキーボード

この記事はEarth95sを使用して作成しました。

日本語配列で左右分離でオーバーラップレイアウト採用のすごいやつです!見てね!

alektor.booth.pm

※記事執筆現在在庫がありませんが、近いうちに補充します。

*1:とはいえ自作キーボード含め国内には他にも色んな配列のキーボードが売られています、興味があればぜひ調べてみてください。

*2:ちなみに同じ英語を使う国でも、イギリスではISO配列が中心に使われているようです

*3:もし他にこの記号配置の配列があれば是非コメントで教えてください

*4:ITエンジニアの多くはメリットとか価値があることを「嬉しい」と表現する生き物です

*5:英語配列と比べて

*6:個人の感想です

*7:何度も言いますがあくまで個人の感想です。他にも理由はあると思いますのでよければコメントでご指摘ください。

*8:違和感ともいえるかも

*9:市販品では物足りない

*10:余談ですが、この経験もあり私の自作キーボード関連のアレコレは全般的に初心者の方でもわかりやすいように、を意識しています